コラム紹介
「中国リスクなんてない by 宋文洲 氏」

中国リスクなんてない

1985年に国費留学生として来日してから日本で起業、2005年には中国人として初めて経営する企業を東京証券取引所第1部に上場させました。
翌年に経営の一線から身を引き、今年7月には24年もの間慣れ親しんだ日本を離れ、
中国の北京に居を移しました。
久しぶりに祖国に戻って感じたのは、僕が初めて日本を訪れた1985年と、
今の中国の雰囲気がとても似ているということ。
あの頃の日本は歴史的に見ても最高の時だったのではないでしょうか。

バ ブルが弾ける前の日本経済はまさに飛ぶ鳥を落とす
勢いで、日本人の誰もが自信に満ちていました。
官僚が優秀だから日本経済は発展している。
日本人は皆勤勉に働くから米国を凌駕しようとしている。

当時の日本で、盛んに言われていたことです。
この「官僚」を「共産党」に、「日本人」を「中国人」に置き換えたことが、今の中国で言われています。
高度成長期には、官僚主導の経済運営が適しているのは当たり前です。
中国が世界の中でも高い経済成長を続けているのは事実です。
ただし、この国のリーダーが優れているという主張には、僕は懐疑的です。
国民が勤勉だと言う話にしてもそう。
今日頑張れば明日はもっと豊になれると思えば、誰だって頑張れるはずです。
昔と今の中国で異なっていると感じているのは、個人主義がものすごく強くなっているということです。
皆が自分の利益のことしか考えていない。
それが、今の中国の発展の原動力になっているのかもしれません。
一人ひとりが、今よりも豊かになりたい。
その気持ちがとても強いから、国全体が発展しているのだと思います。

絶頂期は20年続く、との見方も

こんな中国の成長が、いつ壁にぶち当たるのかは誰も分かりません。
ただ、日本でありがちな感情的な「中国リスク論」には本当に辟易しますね。
中国が危ない、と言う人にぜひ聞いてみたい。あなたは自分のお金で中国に投資していますかと。
中国に来たこともないのに、「あそこは危ない」と喧伝する評論家の気が知れません。
経済人は感情論を排除しないといけません。
そもそも日本や中国、米国と、国を比較すること自体がナンセンスだと思います。
個別の企業、人ごとに評価すべきです。先進国中で最悪の景気と言われる日本でも、
伸びている企業はいくらでもあります。「ユニクロ」のファーストリテイリングが良い例です。 
どこの国にもリスクはあり、同時に成長の余地はある。
リスクを回避しチャンスに変えるのが、経営者の仕事です。躊躇しては、事業などできるはずがない。
実は、僕は3年前に米国と中国で投資活動を始めました。
3年前に米国が今のように凋落するなど、誰も予想していませんでした。
僕も米国に投資した分は大損した。でも中国投資では儲かりました。米国投資では損しましたが、誰かのせいなんかにしません。自ら判断して投資したのですから、責任は自分で背負う。
それが経済人としてあるべき姿のはずです。
国が発展する過程は、船と似ていて慣性力が働きます。
中国は大きな国ですから、一度勢いがつくとかなり長い間は、巡航速度で推進するでしょう。
ですから日本の絶頂期が10年だったとすれば、中国の絶頂期が20年は続くという見方もできます。
あと10年中国の成長が続くと思えば、7年目まで投資をして、最後の3年間で手を引けばいい。
それだけのことです。
僕は、中国の未来を楽観視していません。
今の中国人に、本当の「愛国心」があるとは思えないですから。
官僚や成功した企業家など、金持ちになるほど自分の資産を国外に移そうと躍起です。
そんな人間が差配する国の未来が、明るいとは到底思えません。

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